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日芸ブログ。すでに卒業したので、終わり。誤字脱字ばかりのブログだしね。
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色男の休日
ある小さな村に赤い男が住んでいました。男は太陽に憧れていたため、自分の体を赤いペンキでお化粧をしていたのです。

男の住む村の西側には大きな山が二つ、東には樫の木に生い茂った美しい谷がありました。鳥たちがその村を真上から眺めると、まるで女性のからだのように見えました。さて、男は暇さえあればその東の谷に遊びに行きました。透き通った泉を囲むように青々しい樫の木達がはえていました。男はいつも、その根元の芝生の上に座り、高い空を見上げていました。時に男はその芝生を腹ごしらえにし、何日も何日も谷で過ごしました。不思議なことにその青い草は食べることが出来ました。男はとてもおいしくその草を食べ、空想にふけったのです。
 
そんなある日のことです。

男は朝早くからいつもの谷に遊びに行きました。男と同じ色をした太陽はご機嫌に空上で居眠りをしていました。男は気分良く、西の山たちに話しかけました。

「いつも綺麗にめかした山のお嬢さんたち、君たちふたりは本当に仲がよろしいったらないねぇ」
山々は少し照れたのか、てっぺんをより天に伸ばし、頬を桃色にしながら答えました。
「あらそうかしら。でもそれも当然のことなのよ。私たちのおかげでこの小さな村は、」
「いーえ。そんなことありませんわ。私たちなんて夕方にすこうし、あの太陽を隠して村に闇を与えているだけですもの。たいしたことありませんわ」
おねえさんの方の山がなんだかあせっていもうとの高慢な発言をかき消しました。
「なににしたってあんたたちふたりは美しく、そのおわんからこぼれそうでこぼれない豊満な山、は大自然の神秘だぜぇ」
男はそう言うと、ニヤリと快い笑いにふけりました。
 
黒光りした樫の木たちはその会話を盗み聞きしていました。そして、その中で一番丸々と太い樫の木が男に話しかけました。その樫の木が谷の長だと男はすぐに分かりました。なぜなら男をてんで太陽と同じように丁寧にあつかってくれたからです。

「赤き男よ。ご機嫌いかがかな」
「おうよ、おやじ。元気かってぇーそりゃ元気も元気。見てもらえば一目瞭然だろーがぁ」
「そうですか。それは良かった。私たちもあなたが来てくれると、とても気分がいい。どうです、あちらの樫の木はよろこびのあまりに、自分の葉っぱをするどい歯でひきちぎっています」
「おうよ、見えるにきまってらー。あいつらはああしておいらを馬鹿にしてやんだ。おいらの赤い光で成長なんてしたくはねぇーんだとよ」
「いえいえそんなことはないですよ。その証拠によろこびのあまりに樫の木たちの根元からたくさんの絵の具たちが飛び出ていますよ。あなたはあの太陽と同じような力を持った雄大な男ですよ」
「おうよ、そりゃそうだい。おいらはてっきり、おいらの体をあの気色悪い色たちで染めちまおうとたくらんでるのかと思っちまったとこだ」
森の長はなんだが得意げに振り返り、奇妙な笑みを並んだ樫たちに浮かべました。
「どうです。あの絵の具たちでこの村をきれいに塗りなおしてみたらどうでしょう」
「おうよ、そりゃいい。おやじ、あの泉をちょっとかりていいかよ」
「もちろん、そのつもりでしたよ」
また長は不可解な笑いを澄んだ空に投げかけました。

男はさっそく辺りの絵の具を集めると、泉で具を溶かしはじめました。泉の色はそのたびに鮮やかな色に染まりました。ふでがなかったので男は自分の髪の毛で塗ることにしました。絵の具の中には男がいままで見たことのない色がたくさんありました。男の好奇心はそのたびに彩りました。なんだかこの村には色というものが少なかったのでは、とさえ思えたのでした。

 「世界はひれえー」
 
赤い男はとうとう村を自由に塗り始めました。恐らく男は何も考えていませんでした。そうでなかったらあんなに自分の世界の色を簡単には塗り替えられないからです。
「これですべてがおいらのもんだ、おいらは太陽よりえらいぜ。おいらは太陽よりえらいやー次は太陽を塗ってやろー」
この歌を聞いていた太陽は怒りました。赤い太陽が紫色になるほどでした。
 そして、男が塗った二つの山や、川、森、すべてに熱い光を浴びせました。絵の具たちは熱さのためにとけはじめます。その光景はなんだか美しく、なにかが生まれ、滅びる瞬間のようでした。
「お、おい。どうなってんだ。」
太陽の光はますます強くなっていきました。
「やめやがれ、ばかやろう、あっ、ちょ、ちょっと待ってくれ」
どうやら男の赤いペンキまでが解け始めました。また、たくさんの溶けた色たちは村のいたる所で川のように流れ出しました。男は赤いペンキがとれ、素っ裸になりました。まるで、赤ん坊のようでした。男は赤い汗を拭いながら言いました。

「太陽さん、謝るからこれ以上光を強めないでくれ。苦しくて死んでしまう」

太陽は男を許し、普段のやさしい光に切り替えました。その光は流れる色たちの感情もなだめました。そのおかげで今まで村になかったような純粋で清らかな色たちが住み着きました。村はさらに美しくなりました。素っ裸の男は恥ずかしさのあまり泉につかったきり出てきませんでした。男はなんだかそのぬるぬるした泉につかっていると気持ちよくなるのでした。

 一部始終を見ていた黒い樫の木たちは、葉と葉をこすり合わせながらとても悔しそうにしていました。樫の木たちは男を利用してこの村を乗っ取るつもりだったのです。
 
太陽は相変わらず、ごきげんに、優雅に空を泳いでいました。

近所という森
 たぬきが森に、本当にぽつんといました。大きな樹木の葉から零れるしずくのように、それは本当にぽつんと住んでいました。

たぬきは畑ににんじんをとりに向かっていました。畑は洞穴の目の前、ほんの五秒ほどで着くところにありました。本日は五丁目のうさぎさんが食事に来る予定でした。親友のくまさんが言うには「にんじんを制する者はうさぎを制す」そうアドバイスをくれました。単純ではありますけど、たぬきはにんじんでうさんぎさんをもてなすことにしました。

 畑に着くと、たぬきはにんじんの母親を子供たちの前で殺しました。子供たちは涙を流しました。もちろん、たぬきも泣きました。たぬきは言いました。

「君たちなにも悲しくないんだよ。だってそうだろ、母親が死ぬ悲しみを知らないにんじんなんて、てんでおいしいと言える代物ではないんだよ。そうやって家族を目の前で殺されることで君たちはどんどんおいしくなるんだ。悲しみを知らなきゃ悲しんでいる者に、ましてや、喜んでいる者には決しておいしいなんて言わせられないんだ。極端に言えば、君たちは母親の死を喜んでもいいぐらいなんだ。
 それにね、生きている者はなにかを殺さずには生きていけないんだ。きれいなままでは生きていけないんだ。オイラは思うんだ。「命を大切に」なんてよくフクロウおじさんは言うけど、彼も結局、生き物を殺すことで生きているんだ。彼はただ口を開けて飛んでいるだけで、何千何万という小さな虫を殺しているし、爪で羽をむしるだけで、何億というダニが命を落としているんだよ。命をどう大切にすればいいんだい。オイラには到底無理だよ。できたとしても仲の良い仲間の命ぐらいしか大切にはできないよ。オイラは四丁目のねずみさんも友達だけど。昨日だってオイラは七丁目のねずみさんを食べたよ。友達ではないからね」

 そういうとまたたぬきはまた、涙をこぼしました。そのたぬきの涙もまたこのにんじんたちをおいしくする源でした。この時代には雨という旧世界の恵みはありません。植物や動物の水分は全部なみだから摂取されているんです。『なみだ』を知らない森は反映することは決してないんですね。

「どうしたの。元気ないみたいよ」
 
五丁目のうさぎさんがオイラに尋ねました。でもオイラは口を開こうとはしません。
 
「なに気を使っての。そんなんじゃ私はたぬきくんに一生、心を開かないよ。いつもたぬきくんはそうやってなにも言おうとしないんだから」

 たぬきは動揺してしまいました。彼にとって目の前のうさぎさんが何よりも一番の相談相手だったからです。でもやっぱり、そんなうさぎさんの言葉は的を得ていました。木の葉の手紙と、会って話すたぬきさんの発言から、それがまるで別人からのメッセージ、だとさえ言われてしまうほど、手紙と言葉には違いがありました。たぬきは閉じていた口を少しずつ緩めて、伝えました。にんじんさん達の話もしました。しかし、重要なのは三日前の狩りでうさぎさんの同胞を殺した話でした。うさぎさんの優しさの中で彼は赤子の還ったように力が抜けてしましました。
 不思議と涙は出ませんでしたが、それ以上のものが言葉とともに口の穴からでていったようでした。たぬきはうさぎさんにすべてを話しました。そして、自分のことを誰かに伝えるというのがとても大切なことだと気が付きました。うさぎさんが帰ると、気違いのように泣きました。

こうして、森は反映していくのでした。言葉がもたらす涙が森を生き生きとさせるのでした。

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